笑うに笑えない 大学の惨状
安田賢治著
祥伝社新書
当世大学気質
「大学通信」という会社(どういう会社かはよくわからないが、全国の大学に何らかの情報を提供する会社のようだ)に長年勤めているという著者が、昨今の大学の状況を書き綴った当世大学事情。
僕自身が大学に入ったのはもう40年も前で、この本を読んだのは永らくこういう世界から離れていたときだったため、まず、昨今の大学入試事情がこれほど大きく変わっていることに驚いた。もちろん少子化で学生が少なくなったとか、AO入試に代表されるように入試が多様化していることはこれまでも報道で知っていたが、大学入試自体が以前とは違ってずっと簡単になっているというのは今回初めて知った。しかも、現役志向、地元志向が強くなっているというのも「へぇ」である。僕らの頃は名のある大学の約半分は浪人経験者だったが、現在は有名校でも浪人が激減しており、おかげで予備校も経営が随分大変になったという。
経営が大変なのは大学も一緒で、有名校はともかく、無名な大学は定員割れしているところもあり、そのために四苦八苦しているところも多いらしい。大学によっては、生徒がまだ残っているにもかかわらず破綻、というか廃校するところもあって、その場合は周辺の大学に生徒を転籍させたりするんだそうだ。国際系の学部が全国的に増えているというのはおおむね想定内だが、(看護師の就職率が高いため)看護学部が全国の大学で激増しているというのも今回初耳だった。また二部(夜間大学)や短大が激減しているというのも初めて知った。
大学自体がかつてとはまったく異なる世界になっており、この本でその様子をかいま見れたことは良かったと思う。そう言えば知り合いの大学の先生が、今の大学の先生は授業を生徒に採点評価されるし、生徒の家庭訪問までしなければならないとこぼしていたことを思いだした。僕らの頃は大学の教師はふんぞり返っていて、地位が高い上自由も多そうでうらやましいショーバイだったが、今はそういうわけにもいかないようだ。それが良いのか悪いのかにわかには判断できないが、少なくともこういう本でその辺の事情を知ることができれば、いずれ正しい判断を下す上でそれなりの材料にはなるだろう。分量も少なめな上、記述も平易で大変読みやすいところも良いポイントで、雑誌感覚で読める。