老子
金谷治著
講談社学術文庫
面白味を引き出せていない『老子』
『ビギナーズ・クラシックス 老子・莊子』を読んで興味が湧き、『老子』全文を読むことにした。というわけで手に取ったのがこの本。老子の全文、全81章が収録されている。
各章ごとに、訳文、書き下し文、白文、解説が続き、このあたりの構成は『ビギナーズ・クラシックス』と同様。ただしこちらはやや学術的で、原文の文字レベルで分析した上でそこにさまざまな解釈を施していることを表明しており、それについての解説もある。実際、白文と書き下し文を比べてみると、かなり強引と感じられる読み方、解釈の仕方があるのも確かで、もちろん『老子』自体、書かれていることが難解かつ曖昧であって、しかも二千数百年前の文献であることを考えると致し方ないところではあるが、通常の漢文の読み方とは大分異なっているという印象である。無理やりの解釈ではないかと感じられる部分は決して少なくない。
ただ、本書の読者のほとんどにとっては(少なくとも僕にとっては)、そういったどのように解釈したかという話ではなく、老子の思想に触れることが第一の目的ではないかと思うんで、どう解釈したかという説明はあまり必要性を感じない。老子自体に深く立ち入って、その思想をわかりやすく伝える方を優先してもらいたいところであった。はっきり言って、この本は決してわかりやすいものではない。そのためもあり『ビギナーズ・クラシックス』を読んだときほど面白いと感じなかった。どちらかと言うと、読んでいて苦痛に感じる類の本であったということを付記しておきたい。
本の紹介 『ビギナーズ・クラシックス 老子・莊子』
2021年6月24日
本の紹介『酒楼にて / 非攻』
2021年6月25日