ルポ教育虐待
毒親と追いつめられる⼦どもたち

おおたとしまさ著
ディスカヴァー携書

「教育的指導」という名目での虐待

 子どもの意志と関係なく、親がその進路を決めて、その子どもに対して過剰な教育を押し付ける状況が、本書で取り上げられているテーマであり、これを本書では「教育虐待」と表現している。

 その多くは、親が子どもの人生をコントロールしようとする支配・被支配の関係性から生じている。多くの子どもは反抗期などを迎え、そういう状況に抵抗を試みるが、あまりに親の力が強い(と子どもが思わされている)場合、その子どもは抵抗することができず、そのまま親の言いなりになって育っていく。ただ、元々こういった親の方針は、多くの場合単なる思い込みが根底になっており、そもそもが正しい方法・方針ではないため、子どもの方にそのしわ寄せが来て、中には生活や精神が破綻してしまう子どもも出てくる。親子関係も当然ながら破綻してしまうのである。

 こういう不幸な状況を改善するためには、親の方が、自分の極端な思い込みを子どもに強いることをやめなければならない。そしてそのために、自身が子どもに対して行っていることが、一般的な人間関係の中では許されない所業、つまり虐待であるという認識を持たなければならないとするのが本書の主張である。

 実際、本書で紹介される事例はひどいものが多く、しかも多くの場合、悲惨な結果につながっているが、決して特殊なケースというわけではなく、おそらく周りを見回してみると似たような事例はいくらでもあるんじゃないかと思う。また親が「子どもを東大に入れた」ことを自慢気に書いている本もたくさんある(そしてそういう本が多いということは売れているんだろうと思う)。それに自分自身が、親の立場で子どもにこういう教育虐待めいたことをやってしまう可能性も十分あるわけである。したがって、大人たちに必要なことは、自身の思い込みに従って子ども(他人)をコントロールしようとしてはならないことを認識するということになる。子どもたちは、親のおもちゃではないのである。

 昨今、話題になっている「毒親」のケースもそうだが、いくら自身の子どもであっても、一人の人間であるということは前提として持っておかなければならない。「教育虐待」という言葉は、かなりインパクトのある表現ではあるが、実際、虐待の一つのバリエーションであることは、この本から十分に窺える。偏在する不幸な親子関係を垣間見ることで、認識を新たにすることができるという点でも、「ルポ」というタイトルにふさわしい書である。

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