大人問題

五味太郎著
講談社

「大人」は子どもにとって「問題」のある存在……なのか

 絵本作家の五味太郎のエッセイ、というか、走り書きみたいなもの。10行前後(もっと長いものもあるが)の短い文章が綴られて、並べられている。良く言えば、一種のアフォリズム(警句)とも言えるか。

 タイトルは『大人問題』だが、表紙をよく見ると「大人」と「問題」の間に、「は・が・の」という助詞が入っている。子どもにとって「大人は問題、大人が問題、大人の問題」というような見方が、特に序盤に多数出てくるのをよく反映したタイトルになっている。子どもの立場からすると、大人は、子どもの趣味にいろいろ介入し、いろいろなことをやらせようとして、同時にいろいろなことを禁止しようとし、さらに枠にはめようとするという、問題のある厄介な存在である。こういったことが、子どもの視点から語られて、思わずなるほどと納得する。

 ただ、全体的に無責任にいろいろなことを書き散らかしているという印象もあり、すべてに賛同できるわけではない。もちろん著者には著者の考えがあるんだろうが、「それは決めつけすぎ」と思ってしまうような意見も散見される。おそらく著者は、子どものような自由人なんだろうと感じる。だが一方で、そういう人の視点は社会にとってはきわめて貴重なものであり、それに先ほども言ったように、うならされるような斬新な視点も少なくない。

 特にやはり、前半に出てくる、あくまで子どもの立場を尊重すべきという主張は、非常に目新しく、面白いと感じた。確かに大人は、子どもにとって、大きな抵抗勢力になっていることが多い。

 僕自身は、子ども時代は割合、体制順応型の素直な存在で、大人に合わせて生きてきたような部分が多いため、大人の問題にはあまり気付かなかったが、ある程度成長してくると、知らない間にいろいろな部分で締め付けられていたことがわかるようになって反発するようになり、その結果、今みたいな懐疑的な人間になってしまったわけである。ただ、大人になった今では、子どもにとっての抵抗勢力になり得る存在になってしまったわけで、そうならないよう気をつける必要はあるとこの本を読んで感じた。かなり意識しないと、やはり子どもたちをコントロールしようとしてしまうのは大人の悲しい性である。子どもたちの進歩や成長の邪魔をしないよう、心したいと思う。

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