和泉式部日記―マンガ日本の古典 (6)
いがらしゆみこ著
中公文庫
よくできた翻案だが
ベタなロマンスで少し疲れる
その華麗なる恋愛遍歴故に同時代の人々に「浮かれ女」などと言われ蔑まれた和泉式部が、敦道親王との恋愛沙汰について物語風に書いたのが『和泉式部日記』。これをマンガ化したのが本作である。描いたのは『キャンディ・キャンディ』のいがらしゆみこ。
最初から最後までほぼ恋愛話なんで、いかにも少女マンガのいがらしゆみこの絵は合っているといえば合っているが、やはり原作が和歌中心であるためにマンガ化するには少々厳しい題材かなとも思える。物語部分はそれなりにうまく仕上がっているが、特に和歌の部分は、どうしても解釈が必要になるために、なんとなく無理やりな感じで説明が入り、マンガからちょっとだけ浮いてしまう。こればかりは、いかんともしがたい。
ま、しかしそれでも、普通の人はなかなかいきなり日記文学に原文でトライしようという気にはなるまい。こういう作品を足がかりとして利用するというのであれば、このマンガ、十分有意義とも思える。現在原文の『和泉式部日記』も少しずつ読んでいるところだが、実際ストーリーがわかっていることで敷居が低くなっている。本作では時代考証などもしっかりなされているようで、そういう部分も原文を読むときに大いに役に立つというもの。原作は少々難敵ではあるが、マンガ化作品としては無難に処理できていると言える。
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