日本文学史 近世篇〈三〉

ドナルド・キーン著、徳岡孝夫訳
中公文庫

近世篇の補足で終始した

 ドナルド・キーンの畢生の大作、『日本文学史』の第三巻。近世篇の最後である。第一巻第二巻は、元禄三文人、小林一茶など、内容が盛りだくさんだったが、第三巻は「上田秋成」と「戯作」、「歌舞伎」が目玉で、あとの「徳川後期の和歌」と「漢詩文」は補足みたいな印象である。そもそも江戸時代の和歌や漢詩が一般人の間で話題に上ることはほとんどないんで、取り上げる必然性があるのかも少々疑問ではある。もちろん文学史の通史であることを考えれば、収録する必然性があるのは明らかなんだが。

 「戯作」と「歌舞伎」は、江戸時代後期においては、社会的に大きな影響力を持っているはずだが、どちらも比較的簡単な紹介に終始しており、著者独特の感性が光を放つような箇所もあまりない。そのため全体的に退屈な記述が続く。やはり、本書自体、補足として終始しているという印象で、そういう点では物足りない著作だった。次の近代篇に期待したいところである。

-文学-
本の紹介『日本文学史 近世篇〈一〉』
-文学-
本の紹介『日本文学史 近世篇〈二〉』
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本の紹介『日本文学史 近代・現代篇〈一〉』
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本の紹介『日本文学史 近代・現代篇〈七〉』
-評論-
本の紹介『百代の過客』
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本の紹介『百代の過客〈続〉』