世界史とつなげて学ぶ 中国全史

岡本隆司著
東洋経済新報社

ユニークだが
どこかいかがわしさが漂う歴史解釈

 中国通史の講演を書き起こした本。元々Amazon Audibleで朗読版を聴いた上で、その後中古本を購入して、通しで読んでみた。

 本書の意図は、中国を通史的に見ることにより、世界の他の地域との関わりや中国社会の構造的な特徴を把握しようというところにあり、これ自体はなかなかユニークで面白い試みである。また内容も、僕にとっては割合斬新な事項が多く、少しばかり「目からウロコ」であったが、果たしてこれは中国史の専門家の間で認められている共通認識なのか、それとも著者独自の見解なのか、にわかに判定できない部分が多く、そういう部分が実に悩ましい。これは本書が講演録であることに由来するんだろうが、たとえば、世界的に文明が起こったのは、遊牧社会と農耕社会が接する場所で交易(交換)が起こったためとする説などがこれに当たる。これ自体はなかなか面白い説ではあるが、この主張が正当なのかどうなのか、にわかに判断がつかない。少なくとも世界の多くの歴史家の間で支持されていれば、それなりに説得力もあるのだろうが、どことなく取って付けたような考え方にも思える。

 ともかく、著者の主張によると、こうしたいきさつで黄河文明が発達し、それに続いて「中原」地帯を支配する王朝が現れる。その後、その周辺部にも小国が現れ、これが地球の温暖化や寒冷化の影響によって、離合集散していくのである。この歴史観も新しい解釈と言えるが、こちらもどことなくいかがわしい取って付けた説のような印象を与える。

 基本的に中国の歴史を通じて、小国的な比較的小さな共同体が支配する領域が多元的に共存する時代が長く(特に明代以降はそうだという)、ひいてはこれが地域格差(東西格差)や個人間格差を生み出したというのが著者の主張のようである。現代中国でもこの様相は続いており、潜在的に格差を生み出す構造になっているのが中国なのだとしている。

 本書で独特な視点は、他地域との通商を推進したとして元王朝を評価し、明王朝については、それに逆行する政策を敷いたとして低い評価をしているあたりか。もっとも、このあたりも何となくそういう理解なのかと感じはするが、講演録であるためか、都合2回通しで読んだ(1回目は聴いたわけだが)にもかかわらず、全体的になんだかぼんやりとして、わかったようなわからないような内容になっている。いずれにしても、話半分で聞いておく方が良いような内容ではないかという印象である。わざわざ買ってまで読む必要はなかったと今になって思う。

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