ドキュメント 高校中退 — いま、貧困がうまれる場所

青砥恭著
ちくま新書

貧困が次の世代に引き継がれている

 高校の学費が払えない子ども達や、親の貧困が原因で高校を中退していく子ども達が増えているという話は、ドキュメンタリーやニュースで聞いたことがあったが、現状がこんなにひどいとは思わなかった。

 (誰でも入れるといわれる)「底辺校」と呼ばれる高校には、貧困家庭の子女や問題を抱える家庭の子女が多く入学してくる。なぜならかれらの学力が(貧困が原因で)劣っており、「底辺校」がその受け皿になっているためである。だが、かれらの多くには向上心もなく、ただなんとなく入学しており、しかも親の方でも学校を辞めて働いてほしいと思っているため、必然的に中退者があふれることになる。入学者の半分以上が卒業せずに中退していくような底辺校もあるらしい。

 しかも意欲の問題だけではなく、親にひどい育てられ方をして、帰る場所さえないという子どもも多いという。だが親の方にしても高校を出ておらず、きちんとした仕事に就くことができないで、ストレスをため込んだりしている。何より子どもの育て方を知らないまま親になったというケースもある。十代で(子どものままで)子どもを産み早々に離婚するなど、潜在的に貧困をかかえているわけだ。子どもも同じように育ち、結果的に貧困が次の世代に継承されることになる。20〜30年前に、アメリカで貧困のためにティーンエージャーの親が量産されそれが次世代に継承されているというレポートをテレビで見たとき、なんちゅうひどい国だと思っていたが、今の日本はあの時代のアメリカと同じ状況である。ひどい国になったものだ。

 ともかく本書で紹介されている子ども達の現実があまりにひどく、思わず目を背けたくなるようなありさまが次々に示されてくる。読み進むうちに気が重くなり、同時にあまりにひどい現実にうちひしがれそうになる。

 著者の取材や統計も丁寧ですばらしく、表やグラフを使って現状をわかりやすく示している。この現状を広く訴えたいという心意気が伝わってくるような渾身の作である。また、具体的な問題点や現実的な対策などもはっきりと示されており、非常に建設的でもある。

 こういうひどい状況は、最優先で解決すべき問題であり、すぐに手をつけなければならない問題だが、本書が出版されてから10年以上経っているが、状況が改善されたと思えるような素材はほとんどなく、むしろひどくなっていると感じさせられるようなことも多い。嘆かわしい。

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