学校って何だろう 教育の社会学入門
苅谷剛彦著
ちくま文庫
学校と教育にまつわる常識を疑う
元々は『毎日中学生新聞』に連載していた文章をまとめて、編集・加筆した本らしい。学校と教育にまつわるさまざまな現象について、そのまま受け入れるのではなく、まず疑問を持ち、自分なりに考察しようと提案する本である。元々の連載が『中学生新聞』であるため、中学生に語りかけるような口調になっているが、決して(生徒に教えてやるというような)えらそうな言説ではなく、一緒に考えてみようよというような優しいアプローチである。
全8章構成で、俎上に上がるのが、勉強自体(どうして勉強するのか?という疑問)、試験(試験とは何か?という問)、校則(これについては30年ぐらい前に世間でもかなり話題になった)、教科書(教科書の役割など)、隠れたカリキュラム、先生の世界、生徒の世界、学校と社会のつながりなどである。こういうのは、僕も中高生の時にかなり悩んだというか考えたクチで、当時こういった本があれば、随分役に立っただろうと思わせるような、非常に興味深い考察である。
特に「隠れたカリキュラム」について(学校のカリキュラムという形では存在していないが、学校生活を送る上で従うことが強いられる習慣。たとえば授業中黙って座っているなど)は、かなり斬新な指摘で、僕自身については、今までこういうものの存在を意識したことすらなかったため、目からウロコであった。実際ネット上でも、このあたりの言説をそのまま紹介しているようなサイトがあり(僕はそのサイト経由でこの本に到達したわけだが)、やはりこの着目点が多くの人にとって侮れないということが容易に想像できる。
記述は平易で、多少くどさを感じるくらいだが(中高生にはちょうど良いかも知れない)、しかし内容は濃いし、「常識」とされているものに疑問を持ってみるという大切な方法論を若者に教えるあたり、評価に値する。若い世代に勧めたくなるような良い本である。