マンガ古典文学 源氏物語 (下)

花村えい子著
小学館

過剰なセンチメンタリズムに辟易

 小学館から出ている『マンガ古典文学』版の「源氏」の最終刊。

 上巻、中巻同様、少女マンガ風に美しく描かれていて、源氏の世界をひきつづきそれなりに堪能できるようになっている。ただ、これも上巻、中巻同様、人物の描き分けがほとんどなされておらず、この巻によく登場する女性、女三の宮と紫の上の区別すらつかない。その上、光源氏と、紫の上を含むその近しい愛人たちがいつまでも若いままで、50歳の源氏が20台のときとほぼ同じなのもいただけない。源氏とほぼ同い年でマブダチである頭中将がお爺さん化した状態で描かれているのと対照的。

 またストーリー展開も、あまりにセンチメンタリズムが過ぎて、正直読んでいて辟易してきた。もちろんこれは原作の特徴と考えることもできるが、美麗すぎる絵との相乗効果もあり、ちょっとやってられないという感覚になってくる。こういうストーリー展開は、いかにもロマンス愛好家好みという印象で、僕のような無骨なヤロウにとっては少々厳しい。何はともあれ読了したという満足感以外、あまり残るものがなかったというのが正直な感想である。

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