カフェでカフィを2
ヨコイエミ著
集英社クリエイティブ
感性のみならず演出力にも
見るべきものがある
『カフェでカフィを』の続編。当初は第2巻が出る予定はなかったらしいが、好評だったために出版されることになったという。とは言っても、内容は前作に劣らず、非常にハイグレードである。
全15編の短編集で、日常的なスナップショットみたいな話が多いが、よく練られたストーリーの話(帽子の落とし物からプチ文通が始まる「落とし物」、殺された階上の男がSNSで絡んでくる「俺とナナシロー」など)もある。日常的な話であっても切り口が独特であるため、どの作品にも斬新な印象が残る。ただし、独特の切り口のために導入部分が少し理解困難になり、面食らってしまう作品もある。とは言っても、読み進めていけばストーリーが飲み込めるし、後になって見るとその鋭い切り口の導入部に感心するようになる。
線もきれいで絵も美しく丁寧、ストーリーや語り口もオリジナルということで、かなりグレードの高いマンガである。例によって、あるエピソードの主役が、別のエピソードで脇役として登場するなどという趣向もあり、これがまた面白い演出になっている。他にも停電のシーンはコマの背景が黒になっているなど、あちこちに凝った演出が散りばめられていて、こちらも感心する。こうなると詩みたいなもので、最初に読んだときには気付かなくとも、後でしみじみと味がするということがある。大したものである。
この作家、『カフェでカフィを』を読むまで知らなかったわけだが、どういうルートで知ったか、いまだに思い出せない。朝日新聞の書評で取り上げられたことがあるらしいが、僕は当時朝日を読んでいなかったから、そのルートではないと思う。いずれにしても、この作家を知ることができたのは良かったと思う。なおこの作家、他にも作品はあり、「わたなべえみ」という名義でも以前連載していたようだが、この『カフェでカフィを』みたいなテイストの作品は他にはないようである。シリーズの新作を心待ちにしたいところである。
なお、前作に出てきた「父親にコーヒー豆を送る若者」のエピソードは、シリーズ2にはなかった。