寺山修司からの手紙
山田太一編
岩波書店
青春が随所にあふれている
劇作家の寺山修司と脚本家の山田太一が、学生時代、親友のようなつきあいをしていたという。意外にも程があるという組み合わせだが事実のようで、その証拠に2人の間で数多くの手紙が交わされている。そして寺山から山田に出された書簡をまとめたのがこの本。
2人は、早稲田の同窓で、1年生のときから懇意にしていたようだが、特に寺山がネフローゼで長期入院していたときに頻繁に手紙のやりとりをするようになった。なぜ手紙をやりとりするようになったかというと、寺山が入院した頃、山田がいつも病室に行って寺山と話し込んでいたが、寺山の母に、身体に触るかも知れないからあまり来ないでくれと言われたことがきっかけだったという。話したいけど病室に行きづらくなって、それで手紙をやりとりするようになったそうだ(ここらあたりのいきさつについては、巻末に書かれた「手紙のころ」という山田太一のエッセイで紹介されている。このエッセイも傑作である)。寺山の日記によると、山田の手紙を心待ちにしている寺山修司の姿が窺われ、山田太一の方も寺山に友情を感じていたことが、先のエッセイからよくわかる。
手紙の内容は、よく意味が分からない箇所が多くて面白味はあまりないが、しかし2人とも女性にすぐ惚れていて、しかもそれで逡巡したりしていて、なんだか懐かしい感じがしてくる。学生時代ってそうだったな……などと自分に照らし合わせて思い出す。自分にもこういう手紙が残っていないか探したくなるくらいだ。もっとも残っていたところで恥ずかしくなるのは請け合いだが。ともかく、ちょっと背伸びした感じとか、傍から見たらくだらないことに悩んでいたりとか、とても「青春している」のがなんだか嬉しい。それ以上に2人が互いをとても好ましく思っているのが気持ち良い。
手紙には何人か女性が登場してくるが(2人が恋している女性など)、このうちの1人がその後山田太一と結婚したらしい。紹介されている手紙を割合いい加減に読んだため(内容が分かりづらいから読みにくいのだ)どの人かはよくわからなかったが、何でも寺山が最初に恋していた女性らしい。この辺の事情は、寺山修司の盟友である田中未知が「過去から現在・現在から過去」というタイトルの巻末のエッセイに書いている。なおこの本自体を企画したのも田中未知である。
それから2人の若い頃の写真(おそらく高校生時分と大学生時分)も掲載されていて初々しい。2人とも若い頃は男前で、しかもなんだか「青春している」写真である。この写真も含めて、青春が随所にあふれている、初々しさを感じさせる本であった。