恋する伊勢物語

俵万智著
ちくま文庫

なりひらの
魅力を語る三十七編みそしちへん
恋のデパートときめくハート

 歌人の俵万智が『伊勢物語』について語った37編。初出は読売新聞での連載。

 各項ごとに、『伊勢物語』の1段ないしは数段を取り上げて、その面白さを論じていく。『伊勢物語』は高校の教科書などでもよく扱われる素材だが、正直あまり面白さがわからない。一方で、この本みたいに、その面白さをよく理解している人から解説してもらうと、非常にわかりやすくなる。

 二十三段の「筒井筒」(これも高校の教科書でよく取り上げられている)についても論じられていて、これなど以前はまったく面白さが理解できなかったが、俵万智の解説を聞くとなるほどーと思う(樋口一葉の『たけくらべ』みたいなエピソードらしい、というより『たけくらべ』の方がここから題材を得たというのが正しい)。

 『伊勢物語』は、記述自体が全体的にあっさりしているために余計理解が難しくなるんだが、この本みたいに「ここが良いんでゲスよ、お客さん」みたいに教えてもらうと、著者が感じる面白さがストレートに伝わってくる。この本によると、『伊勢物語』は「三角関係あり、老婆とプレイボーイの関係あり、せつない片想いあり、浮気話あり、許されぬ恋あり、もう何でもあり」(「あとがき」より)であることがわかり、『伊勢物語』の魅力を存分に疑似体験できる。疑似体験というのは、本文に『伊勢物語』の原文の記述があまり出てこないためで、興味があれば原文に当たってくださいということらしい。ちなみに僕自身、これをきっかけに原作の『伊勢物語』文庫版を買ってしまったのだった。これから存分に堪能したいと思う(著者ほど堪能できるかはわからないが)。

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