英単語学習の科学
中田達也著
研究社
目新しさを感じなかっただけでなく
あまり「科学」と言えそうもない
アマゾンのレビューで絶賛されていたんで読んでみたが、正直あまり目新しさを感じなかった。
英単語を憶えるにはどのような方法がもっとも適しているかという問題についての研究成果を紹介する本である。もっとも効果的に記憶に定着させるには、ある程度時間間隔を開けて単語学習を繰り返すとか、文章を読んで文脈から単語を自然に憶えようとする方法よりも単語だけを集中的に憶える方が効果が高いとか、ずっと憶える作業を続けるよりもテスト(的なもの)を織り込む方が定着率が高いとか、そういったことが前半で紹介される。適宜、さまざまな実験、研究結果が紹介され、説得力を持たせようとしているが、中には怪しげな実験・研究もあって、そこから導き出された結論自体も少しばかり疑わしい。一部については、著者自身が他者の実験・研究について論難しているが、著者が支持している実験・研究についてもまやかしめいたものがある。そもそもどの実験についても調査対象の母数が示されていないので、どの程度の規模で行われた実験なのかわからない。著者にとって都合の良い結果だけを集めて、自身の理論のサポートに使っているという印象も受け、話半分で聞いておいた方が良いという感じである。
後半は語源による単語学習やカタカナ語を利用した単語学習など、急に俗な話題になる。もちろん単語が憶えられずにどうしたら良いか悩んでいるような受験生にとっては有用な情報かも知れないが、どれもありふれた情報で、目新しさはあまり感じない。
総じて決して悪くはないが、あらためて読むほどの価値があるとも思えない。迷える子羊の受験生ならば「すがるべき藁」程度の役には立つだろう。ただ一方で、こういうものを無批判に受け入れるような学習者は、あまり進歩しないのではないかとも思う。