語源でわかった! 英単語記憶術

山並陞一著
文春新書

有用な解説もあるが怪しいものもある

 これも英語の語源に関する本で、語源を理解した上で語彙を増やしていこうというコンセプトの本。インドヨーロッパ語(印欧語)、そこから派生したギリシャ語やラテン語、古英語など、英語の原点に戻って、英単語の構成要素を探求していくという主旨で、こういう印欧語、ギリシャ語、ラテン語が現在の英語とどう関わっているかについても解説があり、言語学に関心がある向きには非常に面白いと思う。著者によると、基本となる100の語源を憶えればおおむねOKということで、本書では120の語源について解説を加えている。

 目からウロコみたいなものも多かったが、ちょっと無理やりみたいなものもあって、信憑性に若干疑いを持ってしまう。それに著者は言語学や英語学の専門家でもなく、その辺も疑問符の一因になっている。また、内容が充実しているのは確かだが、後の方になるとだんだん単語の羅列みたいな感じになっていって、読む本というより辞書みたいな様相を呈してくる。そのため読み終えるには相当のエネルギーがいる。面白そうなところだけ飛ばし読みするというのが、この本のベストな使い方だと思う。

 内容はたとえば、印欧語のbhreu(ブリュウ、煮えて膨れる)が変化して、brew(醸造する)、bread(パン、膨れるという感覚から)、bride(花嫁、パンを焼く人)、bribe(賄賂、パンを役人にそっと渡す)、breast(胸、呼吸で膨れるため)、breath(呼吸)、broad(広い、焼いて膨れて大きくなったという語感らしい)などが派生したというようなことが書かれている。たとえば語源「ped」が「足」、「que」が「疑問」、「ten」が「張る」の意味だというような記述はわかりやすかったが、語源「ker」(曲がった)からcreep(這う)ができたというのは少し疑わしく感じる。他にもなんとなくごまかしているような箇所があった。個人的には接頭語(ab-やpre-)と接尾語(-alや-ment)などの解説が欲しかったところだが、接頭語と接尾語については64ページと65ページの2ページで一覧表のような体裁でまとめられているだけだった。

 とはいえ、印欧語から英単語へのアプローチが僕にとっては新鮮で、総じてなかなか面白い本と感じたのは事実で、内容も充実していると思う。内容が雑多なので、基本的には辞書代わりに使うのが良いんじゃないかという気がするんだが、それを考えると、登場する英単語の索引があるともっと良かった(実際には索引はない)。そういう惜しい点も散見される本である。なお、本書は縦書きで、横書きの英単語が随所に混じるため非常に読みにくい。編集担当者がなぜ横組みにしなかったのかはなはだ疑問である。そういう点も惜しいと言えば惜しい。

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