光村ライブラリー6 太郎こおろぎ ほか
光村ライブラリー10 空飛ぶライオン ほか
光村ライブラリー14 木龍うるし ほか
山下明生他、佐野洋子他、石井睦美他著
光村図書出版
教科書まるごとで触れないことには
「中くらいなり」の懐かしさ

他でも書いたが(竹林軒出張所『教科書を漁る』を参照)、かつて国語教科書に使われていた教材を集めたアンソロジーが、当該出版社(光村図書)によって出版されている。それが『光村ライブラリー』で、今回はその中から、僕が小学生のときに使っていた(1970年代前半の)教科書の素材を選んで読んでみた。前にも書いたように、「セイロンのカルナナンダ」とか「アムンゼンとスコット」の教材はここには収録されておらず、ここに収録されているのは、児童向けの物語がほとんどである。
国語の授業は、学校でどんなことをやっていたかほとんど記憶にないが、題材については割合頭に残っているものである。だが、「カルナナンダ」みたいに記憶に残っていたものもある一方で、まったく見覚えすらないものもあったというのがまず驚き。『光村ライブラリー6』に収録されている「貝がら」(大石真作)と「とびこめ」(トルストイ作)などは、よくできた良い話であるにもかかわらず、まったく記憶にない。毎日のように触れていたはずなのに、まったく見覚えがないなんてことがあるのかと我ながら思う。他にもこの『6』には、「はまべのいす」、「エルマー,とらに会う」、「太郎こおろぎ」、「吉四六話」が収録されていて、教材としての記憶があって懐かしかったのは「太郎こおろぎ」のみである(「エルマー」と「吉四六」は良く知ってはいるが、僕が使った教科書には採用されていなかった)。なお「太郎こおろぎ」は3年生、「貝がら」、「とびこめ」は4年生の教科書に掲載されていたものである。

『光村ライブラリー10』のラインナップは、「空飛ぶライオン」、「アナトール,工場へ行く」、「子牛の話」、「ひと朝だけの朝顔」、「茂吉のねこ」、『光村ライブラリー14』のラインナップは、「南に帰る」、「三人の旅人たち」、「たん生日」、「かくれんぼう」、「木龍うるし」である。このうち僕が小学校で触れたはずなのは「ひと朝だけの朝顔」と「木龍うるし」で、「ひと朝だけの朝顔」はまったく記憶になかった。ちなみに作者は井上靖で、ユニークな短編小説であった。どの教材も面白い素材で、アンソロジーとして読む分には十分楽しめる本ではあるが、懐かしさを求めて読む分にはいささかもの足りない。やはり教科書まるごとで触れないことには、「中くらいなり」の懐かしさで終わってしまう。
なお、教科書の教材の中には有名な作品も一部あり(6年生の教材に収録されているドーデの「最後の授業」や小川未明の「殿さまの茶わん」など)、こういう作品については、概ね別の形で出版済みで、そちらで読めるため、この類のアンソロジーで探す必要はない。僕自身も「殿さまの茶わん」は『小川未明童話集』ですでに読んでいる。だからこそ、(出版機会があまりない)執筆者が明示されていない教材の方を読みたいのである。







