ネイティブスピーカーの英語感覚
ネイティブスピーカーの英文法〈3〉

大西泰斗、ポール・マクベイ著
研究社出版

今度は助動詞と副詞
英文法つまみ食い

 『ネイティブスピーカー』シリーズ第3弾は、助動詞(must、will、can 、may、shall、shouldなど)と一部の副詞(up、down、out、off)。これらの助動詞・副詞の本来の意味(「基本イメージ」)を説いて、そこから派生してくるイメージ、意味を紹介していくという方法論で、このようなやり方は言語の学習法として正統的であり非常に良いと思う。こういう方法論は、高校や中学の先生たちにも共有してほしいところである。

 僕自身が中学生のとき、「未来」をあらわすwillになんで過去形(would)があるのか不思議でしようがなかったが(当時の先生に訊いたら「形式上の話だから」という説明が返ってきて、それなりに納得したけどね)、そういうことについても解説がある。なんでもwillは未来じゃなくて「推量」をあらわす助動詞なんだそうだ。なるほどこれだとつじつまが合う。ただ僕自身はwillの「基本イメージ」は「意志」だと思っていたので、そのあたりは少々個人的に異論がある部分ではある(要は「意志」と「推量」の両方の意味があると考えれば良い)。

 本書で触れられている単語の多くについては、それなりに英語学習を続けている人たちは、おそらくある程度のイメージを持っていると思うんだが(特にup、down、out、offなど)、しかしそれが、この本のようにきっちりした形でまとめられたことはこれまでなかったんじゃないかと思う。原因として考えられるのは、こういう部分の解説にどうしても独断が入りやすいということがある。それは『ネイティブスピーカーの英語』シリーズ全般で感じる部分ではあるが、それをあえてやってのけることには別の大きな意義がある。また、学校の講義のような雑談混じりの親しみやすい語り口も本書の魅力である。そういう意味でも、高校生をはじめとする英語学習者にとって魅力的な本になっている。

 なお、今回読んだ『ネイティブスピーカーの英語』シリーズの3冊だが、薄い割にはどれも高価でちょっと買いにくいという向きには、同じ著者による『一億人の英文法』という本がある。内容については、特に『ネイティブスピーカーの前置詞』、『ネイティブスピーカーの英語感覚』に共通する部分が多く、値段も手頃である。また『ネイティブスピーカーの英語』シリーズの別の本、たとえば『ネイティブスピーカーの単語力』などは、『英単語イメージハンドブック』と内容が重複している。ただし『一億人の英文法』も『英単語イメージハンドブック』も参考書然としていてあまり通読しようという気にはさせられない。面白味もあまり感じられない。一方この『ネイティブスピーカーの英語』シリーズは、語り口や読みやすさ、切り込み方に魅力があるんで、金をけちらずにこちらから入るのが良いような気もする。とりあえず、まず最初に図書館などで探して読んでみると良いのではないかと思う。

-英文法-
本の紹介『ネイティブスピーカーの英文法』
-英文法-
本の紹介『ネイティブスピーカーの前置詞』
-英文法-
本の紹介『日本人の英語はなぜ間違うのか?』
-英文法-
本の紹介『はじめての英語史』