黒猫/モルグ街の殺人
エドガー・アラン・ポー著、小川高義訳
光文社古典新訳文庫
もう少しバラエティが欲しかった
エドガー・アラン・ポーの短編集。
代表作「黒猫」と「モルグ街の殺人」が目玉で、他に「本能vs.理性」、「アモンティリャードの樽」、「告げ口心臓」、「邪気」、「ウィリアム・ウィルソン」、「早すぎた埋葬」が収録されている。「本能vs.理性」はエッセイで、他はすべて短編小説だが、「黒猫」、「アモンティリャードの樽」、「告げ口心臓」、「邪気」は似たような話であり、特に「告げ口心臓」と「邪気」はかなり似ていて、どうしてこういうものばかり集めたのか、選者の感性に疑問を持つ。こんなものばかり並べられたら、ポーの作品がこんなものばかりかと思うのは僕ばかりではあるまい。
本書に収録されている作品のうち、「黒猫」は恐怖小説の代表作、「モルグ街の殺人」は推理小説の嚆矢とされる作品である。あまり有名ではないが、「ウィリアム・ウィルソン」は、二重身(ドッペルゲンガー)あるいは解離性障害(多重人格障害)をイメージさせ、ポーの精神世界を垣間見せられて興味深い。一方で「早すぎた埋葬」は、用意周到で構成がしっかりしているという印象の作品で、短編小説らしいオチがなかなか面白い。「本能vs.理性」は正直まったく面白味を感じなかった。
ポーの作品を読むのは今回が初めてだったが、総じてなかなか興味深い作品が多いという印象である。ただ先ほども言ったように、この選集での作品選定については多少の疑問を持つ。
翻訳について言えば、まずまず読みやすいと言えるが、ところどころ説明が不明な箇所がある(特に「黒猫」と「モルグ街の殺人」)。もっともこれは(訳者によると)原作によるものらしいが。
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