英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」

尾幸次郎著
大修館書店

英語の語順を屈折との関係で解説したあたりが目玉か

 現代英文法の中に存在するさまざまな疑問について、英語史の立場から回答を試みようとする本。

 かつてかなり似た趣向の本に『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』という本があったが、あれと内容的には近く、実際いくつかの事項が重複している。この本の方が後発で、しかもタイトルまでそっくりと来ており、タイトルをつける段階でもう少し考えなければならないんじゃないのと思うが、編集者(あるいは著者)にはそこまで頭が回らなかったらしい。

 この2冊を比べると、先述の『はじめての英語史』の方が、問題の立て方がうまく、またよくまとまっていて読みやすい。一方で、詳細さで言えば本書の方が勝るという印象である。序盤では特に、屈折(活用みたいなもの)と格や語順との関係(屈折がなくなることで、格を語順で規定するようになり、語順が固定化していったという話)が語られ、このあたりは非常に興味深い。また、仮定法が元々従節(that節など)に使われる表現で、今残っているのはその名残などというのも目からウロコの説である。

 ただ、大母音推移(英語の音が明瞭なものから曖昧なものに変化してきたこと)のために、現在のように綴りと発音の違いが大きくなってきたとか、不定冠詞のaが母音の前でなぜanになるか(元々1を表すanが子音の前で消えた)とか、あるいは現在完了形がhave+過去分詞になった理由とか、そういった内容は、『はじめての英語史』にも出ており、こちらの本で鬼の首を取ったような書き方をされても、あまり良い印象は持たない。また、終わりの方の不定詞の説明についても、あまり納得のいく解説ではない。こういった事項は、ほとんどが後半で、とすると、このあたりは「水増し」に相当する部分だったのかなどと勘ぐりたくなるが、真相はわからない。実際、この本には続編も出ており、そういう部分を考え合わせると、著者としてはまだまだ言いたいことがあったとも言える。そうであれば「水増し」というわけでもないんだろうが、いずれにしても、この本の目玉は前半部分である。実際僕は、この本を図書館で借りてその後買ったわけだが、途中で止まったまま半年以上寝かせていた。後半に差しかかって飽きてしまったためであるが、前半に比べ後半のインパクトが欠けていることは事実である。

 どちらか一冊ということであれば『はじめての英語史』に軍配が上がるが、こちらの本も(特に前半部分は)読んで損のない内容と言えなくもない。新しく得られるものもあるにはある。

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