マンガ古典文学 竹取物語
池田理代子著
小学館
「悪くはないが面白味がない」
シリーズ自体が失敗……か
これも小学館の『マンガ古典文学』シリーズの1冊。このシリーズ、小学館の創業90周年企画ということで、当初は力が入っていたようだが、蓋を開けてみると全9巻というなんとも中途半端な構成になってしまった。牧美也子が描く予定だった『蜻蛉日記』の企画がポシャったために9巻構成になったというのが真相のようで、ま、それはそれでしようがないとしても、内容が著しく物足りないのは致命的である。企画自体に目新しさがなく、しかも内容がもう一つということであれば、これはもう企画としては完全に失敗と言って良いんじゃないかと思うが、こういう言い方は小学館にとっては酷かも知れない。だがそもそもこのラインアップに『竹取物語』を加えるという発想からして企画力のなさを示しているような気がする。
『竹取物語』は、細かい部分まで知らないにしても、日本人なら大抵の人がおとぎ話やなんかで見知っている作品である。作り物語であるため素材としてもマンガ化しやすい上、SF的な要素があるために翻案されて別の話として仕立て上げられることもよくある。要するに、マンガ化する素材としてはまったく新鮮味がないわけね。だからたとえデキが良かったところで、結果的にはどうってことはないわけだ。大敗はしないにしても勝つことはないという、サッカーで言えば超ディフェンシブな戦いなわけで、全然面白味がない。
この池田理代子の『竹取物語』もまさしくそうで、悪くはないが面白味がない。この『竹取物語』を目にすると、マンガ化する古典作品を選ぶんなら、もう少しマイナーな作品、たとえば『紫式部日記』や『讃岐典侍日記』などを選ぶ方がまだ良かったんじゃないかと感じたりする。こういった作品であればこれまでマンガ化されていないんで、少なくとも希少価値は出てくる。おそらくマンガ化には向いていないし、面白さもあまりないだろうが、少なくとも企画としてのオリジナリティはある。
本作については、読みながらウトウトしていたような具合で、やはり予想どおり、目新しさや面白さを著しく欠く本だった。かぐや姫が、場面によって意地悪げに描かれたりするのもあまり好みでない。だから結局のところ「悪くはないが面白味がない」という印象で落ち着くことになるわけだ。