日本語の美

ドナルド・キーン著
中公文庫

とりとめもなし、目新しさもなし

 日本文学研究者のドナルド・キーンのエッセイ集。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3部構成になっており、『中央公論』の巻頭言として2年間連載していたものがⅠで、ⅡとⅢがいろいろな雑誌からピックアップしたエッセイ。

 タイトルが『日本語の美』になっているが、日本語の美に関連するような話はない。ただ、エッセイはどれも著者が日本語で書いたもので、しかも日本語について述べたものも多いため、タイトルに偽りがあるわけではない。とは言え、雑多なエッセイの寄せ集めであり、全体的にとりとめがないという印象は拭いがたい。

 石川啄木論や徳田秋声論は『百代の過客〈続〉』と内容がかぶるし、三島由紀夫や安部公房について書いた文章も、あまり目新しさは感じない。総じて面白味がないという印象である。編集サイドのやっつけ仕事という感がなきにしもあらず。この本を読むんなら、『百代の過客』や『ドナルド・キーン自伝』『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』などの著書の方をお奨めしたい。

-随筆-
本の紹介『ドナルド・キーン自伝』
-文学-
本の紹介『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』
-文学-
本の紹介『百代の過客〈続〉』
-評論-
本の紹介『百代の過客』
-文学-
本の紹介『「ニューヨーク・タイムズ」のドナルド・キーン』
-評論-
本の紹介『日本人の質問』
-英語-
本の紹介『Chronicles of My Life』
-文学-
本の紹介『日本文学史 近世篇〈一〉』
-日本史-
本の紹介『明治天皇〈一〉』