ドナルド・キーン
わたしの日本語修行

ドナルド・キーン、河路 由佳著
白水社

誇り高くも人間味あふれる
ドナルド・キーンの人間性

 日本文学研究者のドナルド・キーンに対するインタビューをまとめた本。インタビューのテーマは、キーン氏の学生時代から研究者時代に至るまでの話で、学生時代に日本語と日本文学に出会い、やがて日本文学の研究を行うようになるまでが詳細に語られる。

 キーン氏は、飛び級により16歳でコロンビア大学に入学するほどの秀才で、少年時代から外国語に対して多大な関心を持っていた。やがて漢字に惹かれ中国語を勉強するようになるが、その後アーサー・ウエーリ訳の『源氏物語』に触れ、コロンビア大学で日本語を学習する機会に恵まれる。

 やがて、コロンビア大学の日本語講座に飽き足らず、海軍が主宰していた海軍日本語学校(当時、太平洋戦争開戦直後であり、米軍が対日本戦を遂行する上で、日本語を理解するアメリカ人を必要としていたことからこのような学校を開設していた)に入学し、本格的に日本語学習を行うことになる。その後、陸軍の日本語学校を経て、海軍に従軍し、捕虜との通訳として活動した後、終戦を迎える。終戦後は英国のケンブリッジ大学に留学し、講師として講座を持つなどし、1953年になってから、念願の日本留学を果たして京都大学に入学、帰国後はコロンビア大学で教鞭を執りながら、本格的に日本文学研究を行う。

 こういった活動についてキーン氏自身が詳細に語った話がまとめられているのがこの本だが、特に興味深いのが、彼が日本語を学習した方法に関する話で、これは外国語学習者にとっても大いに参考になる部分である。キーン氏自身、さまざまな場所で学習活動をしてきたが、特に海軍日本語学校での学習方法を彼自身非常に高く評価しており、実質的に11カ月で読み書きが相当程度こなせるようになった(しかも古語まで)というのだから驚きである。当時使用していた教科書が長沼直兄著の『標準日本語讀本』(いわゆる「ナガヌマ・リーダー」)という本で、この本は基本的な日常会話から文学作品に至るまで教材として収録していたという。また、コロンビア大学では角田柳作という先生に古文や漢文などを習ったんだが、そのことが、日本文学の研究者になる上で大いに作用したという。キーン氏によると、日本語の「先生」という言葉を聞くと角田氏しか思い付かないというほど、彼に心酔していたらしい。

 この本を読むと、キーン氏自身の、誇り高くも人間味あふれる人間性に触れられるような思いがするが、同時に外国語の学習方法についてもいろいろと参考になる部分がある。とは言え、キーン氏自身、語学の才能が一般人よりはるかに抜きんでているのは明白で、100%彼の真似をしても無理というものだろうが、それでも大変興味深い。キーン氏が書いているさまざまな日本文学論にも興味が出てきた。

-評論-
本の紹介『百代の過客』
-文学-
本の紹介『百代の過客〈続〉』
-文学-
本の紹介『日本文学史 近世篇〈一〉』
-文学-
本の紹介『日本文学史 近代・現代篇〈一〉』
-日本史-
本の紹介『明治天皇〈三〉』
-日本史-
本の紹介『明治天皇〈四〉』
-文学-
本の紹介『日本人の美意識』
-文学-
本の紹介『「ニューヨーク・タイムズ」のドナルド・キーン』
-文学-
本の紹介『俘虜記』