白夜/おかしな人間の夢
ドストエフスキー著、安岡治子訳
光文社古典新訳文庫
描写がくどくて読みづらい
ドストエフスキーの短編集。「白夜」、「キリストの樅ノ木祭りに召された少年」、「百姓のマレイ」、「おかしな人間の夢」、「一八六四年のメモ」の5編構成だが、最後の「一八六四年のメモ」は小説ではなくスケッチというか単なるメモである。ドストエフスキーの思想的背景みたいなものはわかるが、読んで面白いものではない。
「白夜」は過去何度も映画化されている作品で、ドストエフスキーの中では割合有名な短編らしい。最後にちょっとしたオチがあるが、途中から見えてくるのでストーリー的な面白さはもう一つ。何より、他の作品にも共通するが、描写がくどくて読んでいて辟易する。こういう描写が魅力だという人もいるかも知れないが、読みづらくてしようがない。このシリーズでは、翻訳は比較的こなれた日本語を当てているということだが、それでも読みづらいし、日本語としてかなり不自然な感じがする。
「キリストの樅ノ木祭りに召された少年」は童話みたいな話だが、リアリズム的な悲惨さを反映した短編で、短くよくまとまっている。この作品と次の「百姓のマレイ」については簡潔で読みやすいと言える。ただし取り立ててどうこう言う程のことはない。
一番の難物は「おかしな人間の夢」で、くどいにも程があるという作品。斬新な話ではあるが、中身のほとんどは「夢」の話で、しかも持って回った表現が多い。短編なんだからもう少しシュッとまとめてくれたら良いのに……と思わせるのがドストエフスキー作品の特徴なのか。とにかくどれも読みにくい。今回久々に古典をと思って読んでみたが、正直少し後悔している。やはりドストエフスキーはくどくて読みづらい。接するのは翻案ものの映画やドラマだけで良いかなとあらためて思った。
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