小さなさかな屋奮戦記
松下竜一 その仕事29
松下竜一著
河出書房新社
ある地方の実直な魚屋さんの物語
松下竜一の盟友である梶原得三郎氏夫妻をモデルにした小説。
曲がったことの嫌いな梶原氏が小さな魚屋を開店し奮闘する姿、それを支える妻とのふれあいなどを淡々と、ときにユーモラスに記述している。松下竜一の、盟友に対する優しい視線が心地良い。
『5000匹のホタル』や『ケンとカンともうひとり』などの松下童話に通じる作品で、語り口もそれに近い。正直なところ、インパクトに欠け少し退屈した部分もある。おそらく語り口がその原因ではないかと思う。面白い要素もあり、よくできてはいるんだが、松下竜一の著作ということでどうしても期待が高くなってしまう。とは言え、梶原氏の実直さは非常に気持ち良く爽快でさえある。世の中がこういう人ばかりになれば、さぞかし暮らしやすくなるんだろうが。
本の紹介『潮風の町』
2024年3月4日
本の紹介『あぶらげと恋文』
2024年3月7日
本の紹介『仕掛けてびっくり 反核パビリオン繁盛記』
2024年3月28日
本の紹介『暗闇の思想を』
2024年3月14日
本の紹介『明神の小さな海岸にて』
2024年3月18日
本の紹介『五分の虫、一寸の魂』
2024年3月25日
本の紹介『ルイズ 父にもらいし名は』
2024年3月11日
本の紹介『ケンとカンともうひとり』
2024年4月4日