日本近代文学入門 12人の文豪と名作の真実

堀啓子著
中公新書

ミクロ的な視点の文学史

 日本の近代文学発展に関わった12人について、相互に関係する2人ずつをペアで取り上げ、彼らの事績、作品などについて解説する、新趣向の文学史。

 紹介されるのは、三遊亭円朝と二葉亭四迷、樋口一葉と田辺花圃、尾崎紅葉と泉鏡花、夏目漱石と黒岩涙香、田山花袋と森鴎外、菊池寛と芥川龍之介の12人。それぞれのペアには直接的な繋がりがあまりないものもあるが、何らかの形で共通項がある。たとえば円朝と二葉亭では言文一致体の成立が共通項、漱石と涙香は新聞媒体が共通項という具合である。

 内容は、大学の一般教養のような内容で、タイトルに「入門」と付いていることからもわかるように多分に概説的ではあるが、さまざまな事項について面白い素材を紹介しており、読んでいてい興味は尽きない。概説的といっても決して侮れない面白さはある。

 特に僕の場合、黒岩涙香についてはあまり知らなかったし、田山花袋の『蒲団』がスキャンダルを巻き起こしたという話(考えてみれば当然とも言えるが)も知らなかったため、読むだけの価値は十分あったと言える。

 歴史を鑑みる場合、この本のように同時代に論点を据えた描き方(ミクロ的と言っても良いが)はなかなか魅力的で、大きな説得力を持つ。そういう意味で有意義な本と言うことができる。

-文学-
本の紹介『日本文学史 近代・現代篇〈一〉』
-文学-
本の紹介『にごりえ・たけくらべ』
-文学-
本の紹介『怪談 牡丹燈籠』
-文学-
本の紹介『浮雲』
-文学-
本の紹介『高野聖・眉かくしの霊』
-文学-
本の紹介『日本文学史 近代から現代へ』