前回、中学の英語教科書がひどいと批判しましたが、そこで終わったらあまりに不親切ですので、2年生、3年生の「ニュークラウン(New Crown English Series)」の(急に難易度が上がる)冒頭の項(「Starter」)について、簡単な解説文をPDFファイルで提供しようと思います。
この塾では、授業を行った後、このようなプリントを生徒に渡しています。授業の内容を復習できるようにという意図です。このプリントを参照していただければ、この塾での授業の一端を垣間見ることができるかも知れません。そういう点では、宣材と言えなくもありません。
当塾では、中学生であっても、ブロックリーディング(「スラッシュ」リーディング)風に読んで解釈しますので、原文は、意味の集まりごとに棒線(つまりスラッシュですね)で区切っています。その下に訳文を当てていますが、極力、元の英文を直訳しながら読むのがこの読み方の極意ですので、やや不自然な日本語になっている箇所もあります。
たとえば2年生版の「このシリーズのすべての物語は、多くの動物の登場人物を持っています。」などの表現がそれですが、これは意図的にこのように訳していると考えてください。「物語には動物のキャラクターがたくさん登場します」という訳文の方が日本語として良いのは重々わかっていますが、こういう文章の方が、中学生に教える上で有効で、同時に英語の感覚を掴みやすいと判断した上でこのように書いているのです。普段私が翻訳するときに、このような拙い訳文を使っているとは決して思わないでいただきたい。
ちなみにこの塾では、読むときには極力前からそのまま解釈して理解していき、テストなどでちゃんとした訳文が要求されるときは、その元のイメージを使って日本語を作っていこう、と指導しています。これは翻訳の極意でもあります。
私の主張は、こういった良くない教科書であっても、使い方を選べば、そして十分注意しながら使えば、利用価値はそれなりにあるということです。もちろん良い教材を選ぶに越したことはないですが、現実に中学校の現場でこういうものが使われて、それに沿って授業が行われ、理解度まで評価されてしまうのであれば、それに合わせていかざるを得ないということになります。
なお、この教科書にも、割合良い素材が(一部ですが)あるのも確かです。前に書いたように、教科書はたびたび改訂され、英語教科書についてはそのたびに劣化しているわけですが、中には改訂された後も改訂前の項がほぼそのまま残されている素材があって、おそらく(製作側から)できが良いと判断された結果残されたものでしょうが、そういうものは比較的、内容的に良いものが多いと感じます。2年生版ではLesson 4のRead(「ウルル」の解説)やFurther Reading 1の「Houses and Lives」(かつて3年生の教科書に掲載されていたもの)が、優れた内容のものです。一方の3年生版では、Lesson 3のRead(原爆犠牲者、佐々木禎子さんの話)とLesson 5のRead(キング牧師の公民権運動の話)がデキが良い教材と言えるでしょう。つまり玉石混交ですが「玉」もあるということです。それを考えると、やはり教える側が、それに対して適切なサポートを提供するのが理想と言えるでしょう。中学校の英語教科の先生には、そのあたりを期待したいところです。
各ファイルは、以下のリンクからダウンロードすることができます。