小さなさかな屋奮戦記
松下竜一 その仕事29

松下竜一著
河出書房新社

ある地方の実直な魚屋さんの物語

 松下竜一の盟友である梶原得三郎氏夫妻をモデルにした小説。

 曲がったことの嫌いな梶原氏が小さな魚屋を開店し奮闘する姿、それを支える妻とのふれあいなどを淡々と、ときにユーモラスに記述している。松下竜一の、盟友に対する優しい視線が心地良い。

 『5000匹のホタル』や『ケンとカンともうひとり』などの松下童話に通じる作品で、語り口もそれに近い。正直なところ、インパクトに欠け少し退屈した部分もある。おそらく語り口がその原因ではないかと思う。面白い要素もあり、よくできてはいるんだが、松下竜一の著作ということでどうしても期待が高くなってしまう。とは言え、梶原氏の実直さは非常に気持ち良く爽快でさえある。世の中がこういう人ばかりになれば、さぞかし暮らしやすくなるんだろうが。

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