少し前に、三省堂の中3向け英語教科書『ニュークラウン3(New Crown English Series 3)』に収録されていた「What Makes Music?」というタイトルの文章の対訳を(あくまで悪い文章の例として)紹介したが、意外にもこのページにアクセスが集まっているという現実がある。こちらとしては「悪い文章の例として」取り上げているのであるからそういう目で見てほしいのだが、一定数のアクセスがあるということはこの文章で悩まされている中学生がそれなりに存在するという証なのかとも考えられる。

 そこで今回は、迷える中学生の皆さんのために、同じ教科書のその次のリーディング素材、「Reading Lesson 2」を取り上げて対訳を載せようと思う。この文章は、米国の公民権運動を紹介したもので、内容としては意欲的な文章ではある。この教科書(『ニュークラウン3』)の15年前の版にも収録されており、その後2回の改定を経て、多少の変更はあるが今でも取り上げられ続けている素材であるため、三省堂の側もそれなりに自信を持っている教材なのではないかと思う。ただ改めて読むと、説明不足の箇所も多く、話を単純化しすぎているきらいもある。難しい単語が含まれていることもあり、決して手放しで称賛できるような素材ではないが、この教科書の中では比較的まともなものの1つではある。

 また、長年この教科書で取り上げられていることを考えると、中学校の現場でも先生が(この教材にこなれているため)授業でそれなりに力を入れることが想像される。かつての中学生の話を聴くと、キング師のスピーチ(「I have a dream that my four little children」以下の2段落)を覚えさせられたという話もある。

 今回も対訳を付けて紹介しているが、例によって原文があまり良い文章ではないため、読みやすくするためにかなり意訳している。ただそれでもなるべく原文から離れないよう配慮しているため、変な日本語になっている箇所もある。決してこちらの日本語の表現能力が低いわけでは(必ずしも)ないので、そのあたりはご了承いただきたい。

 学校でこの教科書を使っている中学生の皆さんはぜひ教科書ガイドとして利用していただきたい。


Reading Lesson 2
I Have a Dream

リーディングレッスン2
私には夢がある

In the United States, the third Monday in January is a holiday. It honors the achievements of Martin Luther King, Jr. It is a day to think about liberty and justice for all.

米国では、1月の第3月曜日は休日である。これはマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの業績の栄誉を讃えてのことだ。それは、すべての人々の自由と正義について考えるための日である。

Unfair Laws
Until the 1960s, many laws controlled and limited the lives of Black people in America. There were restrooms they could not use. There were drinking fountains they could not use. There were bus seats they could not use.

不公平な法律
米国では、1960年代まで、多くの法律が黒人の生活を規制し制限していた。彼らが使えないトイレがあり、彼らが使えない水飲み場があり、彼らが使えないバスの席があった。

Rosa Parks
On December 1, 1955, Rosa Parks, a Black woman, was on a public bus in Montgomery, Alabama. She was heading home from a long, hard day at work.
She was sitting near the "Whites Only" section. Soon the section filled up. A white man got on the bus. He did not have a seat, so the driver said to Mrs. Parks, "Give up your seat." "Why should I?" she asked. The driver said, "Give up your seat, or I'll call the police." She refused. The police came and arrested her.

ローザ・パークス
1955年12月1日、黒人女性のローザ・パークスが、アラバマ州モンゴメリーで公共バスに乗っていた。彼女は、長いきつい1日の労働からやっと解放されて家に向かっていたところだった。
彼女は「白人専用」席の近くに座っていた。やがてその(白人専用)席は一杯になった。ある白人がバスに乗り込んできた。彼には座る席がなかったため、運転手がパークスさんに「席を空けろ」と言った。「なぜそうしなければならないのですか」と彼女は訊ね返した。運転手は言った。「席を空けなければ警察を呼ぶぞ」。彼女は拒否した。やがて警察官がやってきて彼女を逮捕した。

Bus Boycott
The arrest of Rosa Parks upset many people. One of them was Martin Luther King, Jr., a leader in the fight for civil rights. He said, "We cannot stand it anymore. Everyone has the right to take any seat on any bus. We need to change the law."
He led the people of Montgomery in a fight for justice. They fought in a peaceful way. People stopped riding city buses. Some walked to work and school. Others shared cars. Many people supported the Bus Boycott, even some white people.

Their fight lasted for more than a year. Finally, on December 21, 1956, the law was changed. Everyone was free to sit anywhere on the bus.
This success was only the beginning. It gave courage and hope to others. People began to start and join movements to change other unfair laws.

バス・ボイコット
ローザ・パークスの逮捕は多くの人を憤慨させた。その中の一人が、公民権運動のリーダーであるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアだった。彼は言った。「私たちはもうこれ以上耐えられない。誰にだって、どのバスのどの席にも座る権利がある。私たちは法律を変える必要がある」
彼は、正義のための戦いでモンゴメリーの人々を先導した。人々は平和的な方法で戦った。彼らは市営バスに乗るのをやめた。一部の人たちは職場や学校に歩いていった。車に乗り合わせる人たちもいた。多くの人々、一部の白人でさえも、このバス・ボイコット運動を支持した。

彼らの戦いは1年以上続いた。そしてとうとう、1956年12月21日、法律が変わった。バスのどの席であっても、誰もが自由に座れるようになった。
この成功は始まりに過ぎなかった。それは人々に勇気と希望を与えた。人々は他の不公平な法律を変えるための運動を始め、それに参加した。

I Have a Dream
In 1963, over 200,000 people joined the March on Washington to support justice for all. Dr. King made a great speech from the steps of the Lincoln Memorial.

"I have a dream that my four little children will one day live in a nation where they will not be judged by the color of their skin but by the content of their character. I have a dream today.
I have a dream that one day … little black boys and black girls will be able to join hands with little white boys and white girls as sisters and brothers. I have a dream today."

In 1964, Dr. King won the Nobel Peace Prize. Four years later, he was shot and killed. The fight for justice continues even after his death. His dream lives on.

[444 words]

私には夢がある
1963年、あらゆる人々のための正義を支持するため、20万人を超える人々がワシントン大行進に参加した。キング師は、リンカーン記念館の階段の上からすばらしいスピーチを行った。

「私には夢がある……私の4人の子ども達が、肌の色ではなく性格の中身で判断される国にいつの日か生きるという夢が。私には夢がある」
「私には夢がある……小さな黒人の少年少女が小さな白人の少年少女と兄弟姉妹として手を取り合うことができる日が、いつか来るという夢が。私には今夢がある」

1964年、キング師はノーベル平和賞を授賞した。4年後、彼は銃で撃たれ殺された。正義のための戦いは彼の死の後も続いている。彼の夢は生き続けているのだ。

学習素材
対訳「What Makes Music?」
学習素材
対訳「Nakamura Tetsu」
学習素材
対訳「Something for Joey」
学習素材
対訳「THE SHERIFF AND THE VIOIN」
学習素材
対訳「Benny's Flag」
学習素材
対訳「A MUJINA」
学習素材
対訳「A BOY'S COINS」
学習素材
対訳「Procrastination」(大学入試問題)
学習素材
対訳「Enjoying Sleep」(大学入試問題)
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