ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 史記

福島正著
角川ソフィア文庫

しようがないとは思うが物足りなさすぎ

 角川の『ビギナーズ・クラシックス』シリーズはこれまで何冊か読んでみたが、どれも外れがない。入門者向けにダイジェストで紹介しよう、原文もあわせてお見せしようというコンセプトのシリーズで、ダイジェストというのが実は非常に良い。正直言うとかなり物足りない感じは残る、読み終わった後。しかし、前に読んだ『大鏡』などの歴史書を例にとってみると、「本紀」の部分は歴代の天皇の事績を書いているだけだったりして、読んでいてもあまり面白くない。そのため結局途中でやめてしまい読まないで終わってしまったりすることがある。これは僕自身、経験済みである。だから面白い部分だけをピックアップするというのは、読みやすさから推し量るならば、これは最高の趣向である。たとえ物足りなく感じるにしても、ゼロよりは多いわけで、高校でただ単に教科書でチラッと見た程度で終わっていることを考えると、『ビギナーズ』で触れたレベルであっても相当なハイレベルと言える。逆に専門家でなければこの程度がちょうど良いとも言える。

 今回は中国の古典中の古典、『史記』に挑んだわけだが、これも結構楽しめたのだった。しかも原文にも触れられるし、申し分ない……と言えなくもないが、しかーしそれにしてもあまりに内容が物足りなさすぎる。大著をわずか200ページくらいにまとめているので、仕方がないと言えば確かにそうだが、わずか3つのエピソードだけしか抜き出していない。しかもそこからさらにダイジェストなんで、物足りなさもハンパない。3つのエピソードというのは、伍子胥ごししょ(「死者に鞭打つ」やつね)、魏公子、項羽と劉邦のそれぞれのエピソードで、しかも「四面楚歌」のように教科書に載るようなエピソードまであって、もう少し充実していてもバチは当たるまいと感じる。ただそうは言っても、背景やなんかをかなり詳細に解説してくれているので、面白いのは面白いが……。でも何度も言うがかなり物足りないのであった。まあ内容に興味があれば、小説もいろいろあるし、横山光輝先生のマンガもあるんで、そちらに当たれば良いわけで、そもそも『史記』自体、ちくま文庫でも岩波文庫で出ているわけでお手軽だし……などとは思うが、でもやっぱりもう少し内容が充実していたら良かったかなというのが本音である。

-マンガ-
本の紹介『史記 (横山光輝版)』
-漢文-
本の紹介『ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 十八史略』