マンガ古典文学 徒然草
長谷川法世著
小学館
このシリーズは失敗!
とあえて断言する
小学館の『マンガ古典文学』シリーズの1冊。このシリーズほとんど読んだが、残念ながら企画倒れという印象で、あまり良いものがなかった。唯一の例外は第1回配本の水木しげる版『方丈記』で、それ以外は見るべきものがない。中央公論の『マンガ日本の古典』シリーズには、質も量も足下に及ばない結果になってしまった。
で、この『徒然草』もご多分に漏れず、平凡なマンガ化作品である。徒然草全243段のほとんどをマンガ化しているが、全部ではない。いっそのこと、面白味のない段であってもなんとか1話のストーリーにしてしまえば「コンプリート」という付加価値がついたんだろうが。
また「マンガ化」という観点から見てもやや物足りない。と言うのも、そのほとんどが、絵に『徒然草』の日本語訳が載っているというようなたたずまいになっているためで、「マンガ化」と呼ぶには少々苦しい内容である。原作が随筆である点を考えれば、こういう形式になるのもある程度致し方ないとも言えるが、バロン吉元版がうまくまとめられていたため、どうしても比較してしまう。個人的には断然バロン吉元版の方を取りたいと思う。
このシリーズには、巻末に解説と寄稿が付いているんだが、シリーズ全般に言えるが、巻末の寄稿はつまらないものが多く、まったく不要だと思う(本書は玉村豊男)。寄稿の他に解説が付いているんだからそれだけで良いじゃないかと思う(解説は良いものが多かった。本書は関谷浩)。
いずれにしてもこのシリーズは、空回りの失敗だったというのが個人的な印象で、企画に携わった編集者はもう少しなんとかする必要があったと思う。そもそも出版社の90周年企画がなんで古典のマンガ化なんだという疑問も残る。中央公論の企画をまねたのかも知れないが、残念ながら2匹目のドジョウはいなかった。