漫画・日本霊異記

ichida著
メディアファクトリー新書

異色の『霊異記』はなかなか秀逸

 『コミックストーリー 日本霊異記』と同様、これも『日本霊異記りょういき』をマンガ化したもの。『日本霊異記』は日本最初の説話集ではあるが、『今昔物語』や『宇治拾遺物語』ほど有名ではない。だがしかし怪異な話が多いためか、マンガだけでなく翻案本も多いようだ。その中でもこの本はなかなかユニークで異色。

 マンガ化しているのはichidaって人で、『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』『うちの会社ブラック企業ですかね?』などのマンガでかつて名前がよく出ていた。絵はプリミティブでよくありがちなマンガではあるが、間が非常に良く(この表現、ちょっとわかりにくいかも知れないが)とぼけた味が全編漂っていて、『日本霊異記』の翻案本としては最高レベルではないかと思う。

 『日本霊異記』は、先ほども言ったように奇譚の類が多く、仏教色が強い。元々、行基ぎょうきの弟子である景戒きょうかいという僧が、仏教の教えを広めるために書いたものであるため当然だが、このマンガについては、絵が素朴で飄飄ひょうひょうとしているため、説法臭さはあまり感じない。むしろ話の面白さが強調されていて大変読みやすい。それに閻魔大王が裁判官だったり、口から発せられる念仏が空也像のように6体の小仏になっていたり、一休さんのとんちネタが出てきたりで、あちこちにくすぐりがあって楽しめる。

 収録されているのは全部で14話(プラス「序」の1話)で、それぞれのマンガの後に原文が掲載されている。原文は漢文調で比較的わかりやすいが、そのことも今回初めて知った。景戒が出家したいきさつが「序」の段で描かれ、『日本霊異記』の特徴がわかるようになっているのも良い。

-マンガ-
本の紹介『コミックストーリー 日本霊異記』
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本の紹介『御伽草子―マンガ日本の古典』
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本の紹介『漫画訳 雨月物語』
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本の紹介『雨月物語―マンガ日本の古典』
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本の紹介『宇治拾遺物語』
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本の紹介『梅沢本 古本説話集』