スマホ依存から脳を守る

中山秀紀著
朝日新書

看板に偽りあり

 依存症治療に携わっている医師が書いた、オンラインゲーム依存に関する本。タイトルには「スマホ依存」と書かれているが、触れられている内容は、オンラインゲーム依存である。したがってSNSなどの依存については触れられていない。

 著者は永らく依存症診療に携わっており、近年、オンラインゲームをやめられない子どもたちを患者として診療する機会が増えているらしい。著者によると、オンラインゲームは、手軽に手に入り簡単に快楽を得られるという点で、覚醒剤やタバコ、アルコールなどと同様「依存物」と定義されるらしい。現在、依存物であるにもかかわらず(他の薬物のように)厳重に管理されているわけでなく、しかも子どもたちがそれに溺れている状況が存在する。しかも近年、世間で「Eスポーツ」などと囃し立てる風潮があり、公然とオンラインゲームが認知される傾向にある。このため、今後、オンラインゲーム依存症が増え、社会問題化し、社会にとっても大変な損失を被ることに繋がりかねないというのが著者の主張である。

 著者の主張には全面的に賛成するが、ただしこの本については、「スマホ依存」を謳っているにもかかわらず、半分以上は依存症全般に関する記述で、残りについてもオンラインゲームに限定されているという点で、何だか欺かれたような気になってしまう。本自体は、割合真摯な態度で書かれているのはよくわかるが、こういうタイトルをつけるのは、羊頭狗肉の類ではないかと出版社に対して苦情のひとつも言いたくなってくる(言いませんけどね)。スマホ依存についての本を期待していただけに、そのあたりが少々残念だった。

医学、生物学
本の紹介『スマホ脳』
-社会-
本の紹介『僕らはそれに抵抗できない』
-社会-
本の紹介『脱ネット・スマホ中毒』
医学、生物学
本の紹介『もっと!』
医学、生物学
本の紹介『スマホはどこまで脳を壊すか』
医学、生物学
本の紹介『スマホ失明』