スマホはどこまで脳を壊すか
榊浩平著、川島隆太監修
朝日新書
正しい結論だとは思うが
非常に物足りない
「脳トレ」などを開発している東北大学加齢医学研究所の若手スタッフが書いた本。同研究所で行われた実験データを元にスマホの実害に迫るというものである。
テーマは、スマホが学力向上にとってマイナスであって、長期的な長時間の使用によって脳が障害を受け、脳の発達に悪い影響が及ぼされるというものであり、その主張自体は、これまであちこちで語られているものとほとんど同じと言っても差し支えない。一部実験データで実証されている(少し疑わしく感じるものもあるが)ところが本書の目玉かなと思う。
もっとも途中、昨今流行りのオンライン・コミュニケーションが対面でのコミュニケーションと比べると質が低いという論考が出てきたりして、しかもこれが全6章のうち2章を占めており、論点が少しずれてきていると感じたりもする。同時に、このあたりは読んでいてかなり退屈した箇所でもある。
最後の章では、自ら実践して、スマホを使わない生活を1週間試みた結果を紹介しており、そのときの実害やメリットについても書いているが、多少の面白さはあるにしてもかなり物足りないという印象。そしてこれは、この本全体の印象とも共通しており、とにかくこの本自体、非常に「物足りない」と感じるのである。面白味もあまりなく、卒業論文あるいは修士論文みたいなつもりで書いているのかと感じてしまう(そんなものを読まされたら堪らないが)。
この本である程度明確になっていることは、実験の結果「スマホが学力向上にとってマイナス」なことがわかったという点だけで、それについても学力偏差値だけが指標になっているため、正直あまり説得力がないのである。もちろんスマホが、学力だけでなく日常的な活動にとって相当なマイナスであることは僕自身実感してはいるが、この本からそれを裏付けるだけの根拠が得られるかと言えば疑問で、時間をかけて読むほどの価値はなかったかなと、読み終わった今感じる。