子宮頸がんワクチン事件

斎藤貴男著
集英社インターナショナル

子宮頸がんワクチンを取り巻く状況を俯瞰する

 かつて国や自治体が積極的に、若い女性に接種するよう呼びかけていたのが、いわゆる「子宮頸がんワクチン」である。「ヒトパピローマウイルス(HPV)が一部の子宮頸がんの原因であるため、このウイルスに感染しなければ子宮頸がんを予防できる」という触れ込みだったようだ。実際に効果があるかどうかはともかく(近藤誠の『ワクチン副作用の恐怖』によると、「このワクチンで子宮頸がんの発生を防げたというケースが世界に一例もない」ため「”子宮頸がんワクチン”を名乗っているのは日本だけ」だそうである)、2013年に「定期接種」に指定されたことから、中高生にまで接種が呼びかけられ、そのキャンペーンが功を奏して、実際に予防接種を受ける人が増加したようだが、その中には、接種後重篤な症状を発症した人がいた。神経障害で生活が困難になった人もいる(本書の第二章で紹介され、慄然とさせられる)。厚労省は、彼らの症状について「ワクチンとの関連性は認められない」として取り合おうとしなかったため、被害者連絡会が結成され、被害者側が国や医療機関と対峙することになった。この一連の流れを本書では「子宮頸がんワクチン事件」と呼んでいるわけだ。

 (日本以外にも)相当な被害者が出ているようなので、普通に考えれば薬害と考えられるが、厚労省では、「因果関係がわからない」から関連性がないとされてしまうのである。力を持つ人の責任逃れはこの国の病根である。「因果関係がわからない」ならば調べるのがあなた方の仕事ではありませんかと尋ねたくなるところだ。ただ、被害者が続出したせいだろうが、このワクチン(グラクソ・スミスクライン社の「サーバリックス」とメルク社の「ガーダジル」)は、その後日本では、「定期接種」の指定が外されてしまう。だが被害者たちは、ワクチン推進派の医師などから手ひどく攻撃される始末(本書でも紹介されている)で、この国の医療業界には正義がないのかと考えてしまう。

 こういったワクチンが導入されたのは、積極的にワクチン行政を進めようとする利害関係者がいるためで、さまざまな医師、役人、政治家がワクチン推進運動に絡んでいる。中には製薬会社から(研究費などの名目で)金を受け取っている人もいて、彼らのワクチン推進の動機が、決して純粋なものでないことが窺われる。こういう背景を知っていれば、ワクチンを接種しようなどという人はあまり出てこないと思うが、実際は(かなり怪しい)効能だけが喧伝され、実に安直にワクチン接種が進められているのが現代社会。こういう深刻な事例が発生していることを知らしめる意味でも、このような種類の本は重要である。

 本書では、関係者からも積極的に話を聞いており、政治的な背景にまで迫っている。永田町や製薬会社のロビー活動の話になると、背景が面倒で面白味は多少なくなるが、こういったアプローチについても必要性は感じる。ワクチン行政はとかく秘密主義で、良い面ばかりが喧伝され暗黒面が伏せられるという、どこか原子力行政と通じる部分がある。消費者、利用者がさまざまな事実についてもっと知った上で、自ら接種について判断できるというのが理想である。もっとも、多くの人が現実を知ったら、ワクチン自体、商売として成り立たなくなるだろうとは思うが。

-社会-
本の紹介『ワクチン神話捏造の歴史』
医学、生物学
本の紹介『もうワクチンはやめなさい』
医学、生物学
本の紹介『子どもと親のためのワクチン読本』
医学、生物学
本の紹介『ワクチン副作用の恐怖』
医学、生物学
本の紹介『インフルエンザワクチンは打たないで』
医学、生物学
本の紹介『ワクチン幻想の危機』
医学、生物学
本の紹介『薬害 コロナワクチン後遺症』
医学、生物学
本の紹介『新型コロナワクチンの光と影』
医学、生物学
本の紹介『成人病の真実』