ワクチン幻想の危機
新型コロナが明らかにしたワクチンの本当の姿
大橋眞著
共栄書房
新型コロナ騒動の総括
2020年に発生した新型コロナ騒動については、一定の総括が必要であると常々思っているわけであるが、いまだにそういった類の反省が大メディアで見られることはない。こういった総括が行われないと、いずれまた同じような狂騒が起こるのは必至で、それは2009年の新型インフルエンザの際に総括をやっていなかったために(同じような)今回の騒ぎが起こった(と考えられる)ことからも明らかである。
とは言え、書籍の世界では今回の騒ぎをきっちり総括しようという動きもあり、本書もそういうものの1つである。著者の大橋眞は免疫学者であり、これまでPCR検査の疑問点や新型コロナワクチンの問題について、いくつかの本で告発してきているが、どれも、内容はともかく本としてのデキがひどく、とてもじゃないが他人に勧められるような代物ではなかった。だがその主張は筋が通っており、もう少しまとまった形でしっかりした書籍を通じて発表してほしいものだと思っていたときに、この本に出会ったというわけである。
この本は、今までの大橋眞の書籍の内容をまとめて、さらに新しい主張を追加したような内容で、非常に充実した内容になっている。今回の新型コロナワクチンの問題点は言うに及ばず、ワクチン自体の効果にまで疑問を呈しており、淡々と理路整然に説いていく。まさに新型コロナ騒動の総括と言って良い内容で、こういう議論はマスコミでもぜひ展開すべきであると思う。
2019年末、中国で出現した「新しい」ウイルス性感染症が、異例の早さで遺伝子解析され、その遺伝子構造に基づいたPCR検査を行うことで、「新型コロナ」ウイルスの感染状況を確認するようになった、そしてそれに対するワクチンが接種されるようになった……というのが今回の騒動の一連の経過である。ただすでにこれだけのことで、いろいろと疑問符が付くという。
まず第一に病原体自体が特定されていないことが一つ目の問題点である。要するにその実態は、単に中国の研究グループが原因ウイルスと推定されるウイルスの遺伝子を解析したに過ぎないということだ。そもそも一般的に病原体を特定すること自体が非常に難しく、ましてやウイルスとなればその難易度は格段に上がるのであって、ウイルスを分離して遺伝子解析するには、通常かなりの時間(数カ月から数年)がかかるものらしい。それを今回は1週間程度でやってのけている点から、本当の病原体を特定できていない可能性が非常に高いという。つまり今回の中国の研究グループが行った作業は、何だか正体がわからない物体(壊れた遺伝子の欠片、あるいは従来の風邪ウイルスの可能性も十分ある)の遺伝子を解析したに過ぎないのではないかというのがその主旨である。
次にPCR検査自体にも問題があり、PCR検査は、ある特定の遺伝子配列を基にして、推定を繰り返しながら増殖させる仕組みで機能するものであって、その目的が、遺伝子の一部が合致したものを検査対象として識別するものであるため、遺伝子構造が次々に変わるようなウイルスについては、そもそもその性質上適しておらず、この種のウイルスをこの検査で特定することは不可能だという。ということは、今回の「新型コロナ」ウイルスのPCR検査は、得体の知れない遺伝子構造に基づいて、仮説を重ねたような検査でウイルスの存在を「特定」しているわけで、結局のところ何を検出しているのか誰にも良くわかっていないというのがその真相だというのである。そのためPCR検査で陽性になったところで、「新型コロナ」ウイルスが体内に存在しているかどうかまったく不明なわけで、「新型コロナ」ウイルスがこの世に存在しているのかどうかすらわかっていないというのが本当のところらしい。
さらには、P社とM社(と本書では表記している)の「ワクチン」にも大いに疑問符が付く。「新型コロナワクチン」の効能と影響はそれぞれの論文に記述されているだけであって、その他の場所で追試されているわけではないことに注意が必要である。論文の中で行われている治験は、二重盲検ではなく片側盲検であり、治験を担当した個別の医師の診断がその結果に反映されるため、状況によっては信憑性が著しく低下する(一般的には、片側盲検の場合バイアスが非常にかかりやすいため、治験としてはまったく信頼性に乏しいとされるらしい)。また、論文の中で導き出された結論についても、データを意図的な方法で解釈しており、それぞれの治験の対象者が同じ症状を示しても、プラセボ群では病気(この場合新型コロナ)の症状と診断され、ワクチン接種群ではワクチンの「副反応」と診断されるため、論文内でプラセボ群の「新型コロナ発症者」の数が必然的に著しく増加する仕組みになっている。さらにはワクチンの「副反応」で重篤だったと推定されるケースが検査結果から除外されているため、かなり恣意的なデータの操作が行われていることが窺われるというのである。そもそもこの論文自体、該当する企業の社員が中心になってまとめているため、追試験ができなければ(実際簡単にできないわけだが)ただの宣伝広告に過ぎないという考え方もできる。
また今回のワクチンはどれも急造ワクチンであることから、十分な治験データがない上、新型の遺伝子組み換えmRNAワクチンは安全性がまったく確認されていない代物で、その危険性は計り知れない。今回のワクチンで使われているLNP(脂質ナノ粒子)が人体内に蓄積するということは判明しているようで(先の論文で指摘されている)、しかも血管の内細胞に作用するらしく、血管周辺で大きな障害を起こす可能性があるという。とにかく、今回の騒動では、非常に大勢の人々が、得体の知れない遺伝子組み換え物質を体内に積極的に取り込んだことになるわけで、今後10年〜20年のスパンで何が起こるかがまったくの未知数なわけである。
以上のようなことを理路整然と、比較的穏やかな口調で語っていくというのが本書の内容である。内容はこのように充実しているが、文章として理解しにくい部分が多々ある上、ほぼ同じ内容の文章が連続で繰り返し出てきたりするため、一方で読みにくさもある。誤植は比較的少ないが、もう少し校正が必要なのではないかと思ってしまう。また、全体的に非常に科学的・実証的に論が進められるが、途中で「メタトロンで器官の波動を計測した結果」が紹介されていたりして、こちらは科学的には信憑性がきわめて薄いものであるため、一気に実証性が低下する結果になっている。こういう怪しげなものを持ち出したら何もかもぶちこわしになるわけで、こういう部分も校正段階で排除すべきではないかと思う。大橋眞の著書にはどれにも当てはまるが、もののわかる常識的な人間が最終チェックをやるべきだというふうに思う。