平家物語 (上)―マンガ日本の古典 (10)
平家物語 (中)―マンガ日本の古典 (11)
平家物語 (下)―マンガ日本の古典 (12)
横山光輝著
中央公論社
歴史物・軍記物のマンガ化は
やはり横山光輝というところに落ち着く!
『マンガ日本の古典』シリーズの1本で、『平家物語』を取り上げたもの。
この『平家物語』、作者が『三国志』の横山光輝であることを考えると、内容も侮れないことは容易に想像が付く。見た目は学習マンガみたいな趣ではあるが、「古典文学をマンガに翻案したもの」と考える方が適切だと言えよう。実際、なかなかの力作である。前にも書いたが、シリーズの他の作もトップクラスのマンガ家が描いており、しかもそれぞれの作家にそれぞれが適任と思われる古典作品を割り当てているところもすばらしい。この横山光輝の『平家物語』なども見事な選択としか言いようがない。
さて『平家物語』、もちろん原作(古典の『平家物語』)を通しで読んだことはないが、それでもそれぞれのエピソードはあちこち(ドラマや歴史の本など)で見聞きしているために内容については割合知っている。だがどれも部分部分であるため、こういうふうに通した形式で示されると、歴史的な流れが非常に掴みやすい。それに原作を通しで読むことなど、僕も含めて普通の人はまずないだろうし、こうやってマンガで提供していただくと敷居が低くなり、読むこちらとしても大変ありがたいというものである。作画や構成も申し分なく、手抜きもない。ただし、登場人物の名前が(それから顔も)似ていることが多く、そのあたり少し区別が難しかった。もっとも作者自身があとがきで、作者の側もなかなか登場人物の区別が難しく、それを区別して表現することが困難だったと告白している。作る方でさえそうであるならば、読む方がそうなるのはある意味当然である。どうしても区別して読み直したいというのであれば、原作に当たるしかないということだろう。僕はそこまで求めないし、エンタテイメントとしても非常に質が高かったので、まったく不満はない。引用元の原作の箇所(巻)についても、各章の序盤の脚注に明記していて、その辺も非常に親切であった。
次は、同じシリーズの長谷川法世の『源氏物語』か、さいとうたかをの『太平記』あたりにトライしてみようかなと思っているところ。ちなみにつのだじろうの『怪談』なんてものまである。